全国消防長会

平成27年度事業計画

全国消防長会の平成27年度事業計画をお知らせします

 わが国の自治体消防は、地域に密着した防災機関として、社会構造の変化等に的確に対応しながら、消防防災体制の充実・強化を図ることにより、地域住民の安心・安全の確保に大きな役割を果たすとともに、国際貢献にも寄与するなど今日まで大きな発展を遂げてきた。
 そのようななか、昨年においては自然災害が全国各地で猛威を振るい、2月には関東甲信地方を中心とする大雪、8月には広島市における記録的な豪雨による土砂災害、9月には御嶽山噴火による戦後最大の火山災害、さらに11月には長野県北部を震源とする地震が発生し、多数の尊い命と貴重な財産が失われた。
 防災・減災に対する国民の関心が高まるなか、我々消防機関は、風水害などの自然災害、危険物火災などの特殊な災害や事故、さらには、国際的なテロ災害、エボラ出血熱などあらゆる事態への対応とその備えが強く求められるようになっている。
 特に、今後発生が危惧される南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模災害発生時に迅速かつ的確な対応が図れるよう、地域の総合的な防災力の強化に国をあげて取り組んでいるところであり、消防団、自主防災組織等の関係機関・団体と連携を図りながら、震災等大規模災害の対策を早急に推進する必要がある。
 消防の広域的な対応については、大規模災害や特殊災害等に備えるため、消防庁において緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画を見直し、平成30年度末における緊急消防援助隊の登録目標数を6,000隊とすることを目指している。全国消防長会としても、緊急消防援助隊の活動体制の強化等に向けた財政支援について引き続き国に対し要望を続けていくとともに、本年度千葉県で実施予定の第5回緊急消防援助隊全国合同訓練等により消防広域応援体制の一層の充実・強化を図っていく必要がある。
 消防の広域化については、規模目標にとらわれず地域の事情を考慮することを基本として推進が図れるよう、必要に応じて消防庁等の関係機関に対して支援・協力の要請を行うとともに、適時・適切な情報提供を行うなど、積極的な取り組みが必要となる。
 消防救急無線のデジタル化については、平成28年5月末のデジタル化移行期限に向けた整備等の促進が急務となっているが、これとあわせて、広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用に伴い、消防防災分野におけるICT技術やG空間情報の活用の推進について検討を進める必要がある。
 近年、出動件数が大幅に増加している救急については、消防と医療の連携による救急搬送体制の強化、ICT技術を活用した救急業務の高度化への対応及び市民等への応急手当の普及促進など、業務の更なる充実を推進する必要がある。
 住宅火災については、65歳以上の高齢者の死者に占める割合が依然として高い状況にあり、今後高齢化の進展に伴い住宅火災による死者数の更なる増加が懸念されることから、住宅用火災警報器の設置率の向上をはじめ総合的な住宅防火対策の推進が必要である。
 また、消防法施行令等が改正されたことに伴い、消防用設備等が新たに設置義務となる雑居ビル、小規模な社会福祉施設、病院・診療所等及びホテル・旅館等の指導の強化や大規模・高層建築物等における防火・防災安全対策の推進が強く求められている。
 化学工場における爆発事故やマグネシウム合金を扱う作業所における火災などが発生していることから、危険物施設の関係事業者への指導の徹底など事故防止対策をさらに推進する必要がある。
 住民の安心・安全の確保を担う消防職員の処遇については、勤務条件の改善、勤務環境の更なる向上等を図るとともに、引き続き消防職員委員会制度の適切な運用を進めていく必要がある。
 災害現場や訓練場等において消防職員の死傷等の事故が依然として絶えないことから、安全管理マニュアルの徹底など組織を挙げての安全管理対策の更なる推進が急務である。
 消防防災行政が直面するこのような諸課題に対し、地域住民が安心して暮らせる災害に強い安全なまちづくりの実現に向け、消防活動能力の向上をはじめ消防防災体制の充実・強化を図るため、全国消防長会は、次に掲げる項目を重点として事業を推進するものとする。

一、震災等大規模災害対策の推進
一、消防広域応援体制の充実・強化
一、消防の広域化への対応
一、消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用への対応
一、救急搬送体制の強化、救急業務高度化への対応及び市民等への応急手当普及促進
一、防火対象物等の防火・防災安全対策の推進
一、危険物施設の事故防止対策の推進
一、消防職員の処遇改善と安全管理対策の更なる推進

事業計画

項目 事 業 内 容
1 総会等会議の運営等に関すること (1) 総会等の運営
 全国消防長会の意思、方針を決定するため、以下の会議を開催する。
・総会(5月22日、23日)
・役員会(10月29日)
・常任理事会(総会時、役員会時、2月上旬)
 なお、緊急事案等が生じた場合は、必要に応じ臨時に会議を開催する。
(2) 総会等決議に基づく要望
 消防防災体制の一層の充実強化を図り、消防を取り巻く諸情勢に即応した消防行政を積極的に推進するため、強力に推進すべき施策について総会、役員会等で決議し、総務大臣等に対して全国消防長の総意をもって要望する。
(3) その他
2 震災等大規模災害対策に関すること (1) 震災等大規模災害対策の推進(重点)
 甚大な被害を及ぼす地震、噴火、風水害、雪害等の自然災害対策に関する諸課題について、国の検討会等の動向を踏まえ、事業推進委員会等を主体として必要に応じて検討し対応する。
(2) その他
3 消防情報の交換に関すること (1) 会報等の発行
 全国消防長会の事業推進及び措置対応のほか、国の動向、各会員情報、消防庁等からの通知、資料等を「会報」・「週間情報」に掲載・発行し、会員、関係機関等に配布する。
(2) 情報管理システムを活用した情報の共有化等
 情報管理システムの「メッセージ送受信機能」及び「電子掲示板機能」等を活用し、全国消防長会事務局と各消防本部相互間における一層の情報の共有化及び双方向化を推進する。
(3) その他
4 消防制度の改善に関すること (1) 消防の広域化への対応(重点)
 「市町村の消防の広域化に関する基本指針」について、管轄人口30万以上の規模目標にとらわれず地域の事情を十分に考慮すること、国及び都道府県の支援を集中的に実施する「消防広域化重点地域」の枠組みを創設すること、広域化の期限を平成30年4月1日まで延長すること等とされたことを踏まえ、必要な情報を適時・適切に提供するとともに、必要に応じて消防庁等、関係機関へ要望する。
(2) 小規模消防本部が抱える課題への対応
 平成26年8月に本会事務局が実施した「消防職員数50人以下の消防本部に対するアンケート調査」の結果を踏まえ、小規模消防本部が抱える課題の解決に向け検討し対応する。
(3)その他
5 消防財政の確立に関すること (1) 国の予算概算要求及び消防財源の確保に係る要望
 平成28年度国の予算概算要求に係る要望(6月上旬予定)及び消防財源の確保に係る要望(11月上旬から中旬予定)について、全国市長会、全国町村会等とも連携を図りながら、総務大臣等に対して全国消防長の総意をもって要望する。
(2) 消防防災施設・設備の整備及び緊急消防援助隊の充実・強化等に係る消防財源の確保
 消防防災施設・設備の整備及び緊急消防援助隊の充実・強化等を図るため、消防補助負担金の確保、地方交付税及び地方債制度の充実、無償使用制度に係る予算額の拡大等消防財源の確保について、財政委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(3) その他
6 消防職員の教養及び処遇に関すること (1) 消防職員の処遇改善(重点)
 消防事務を円滑に運営するため、消防職員委員会の充実を図るとともに、消防組織制度及び消防職員の人事、服制等に関する諸課題について、総務委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(2) その他
7 消防機械及び技術の総合的研究に関すること (1) 消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用への対応(重点)
 消防救急無線のデジタル化移行とあわせ、消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用に伴う諸課題その他消防防災分野におけるICT(情報通信技術)やG空間情報(地理空間情報)の活用の推進について、消防庁の動向を踏まえながら、技術委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(2) 消防機械器具、消防隊員の装備品等に関する検討
 消防機械器具及び消防隊員の装備品等に関する性能、機能等の諸問題について、技術委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(3) その他
8 予防業務の推進に関すること (1) 防火対象物等の防火・防災安全対策の推進(重点)
 防火対象物等の防火・防災安全対策について、消防庁の動向を踏まえながら、予防委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
ア 住宅防火安全対策の推進
 住宅火災による被害の低減のため、住宅用火災警報器の設置対策及びたばこ火災防止キャンペーンの実施並びに防炎品の普及促進等、住宅防火安全対策について総合的に推進する。
イ 防火対象物等の防火安全対策の検討及び防災管理能力の向上
 消防法施行令等が改正されたことに伴い、消防用設備等が新たに設置義務となる雑居ビル、小規模な社会福祉施設、病院・診療所等及びホテル・旅館等への是正指導や大規模・高層建築物等における防火・防災安全対策について、国の動向を注視しながら、必要に応じて検討し対応する。
ウ 防火対象物の違反処理の推進
 「違反是正推進連絡会」における各支部・都府県及び道地区各協議会単位での情報交換や、違反是正事例発表会及び違反是正事例研究会における違反是正に関する各種事例を共有することにより、違反処理技術の向上を図るなど、各消防本部における違反処理の推進を図る。
(2) その他
9 警防・救助技術の充実に関すること (1) 安全管理対策の更なる推進(重点)
 安全管理に対する取り組みは、事業推進委員会及び各消防本部において推進されているが、災害現場や訓練時等における死傷等の事故が依然として絶えないことから、更なる安全管理対策を推進する。
(2) 消防広域応援体制の充実・強化(重点)
 緊急消防援助隊の更なる充実強化方策及び消防防災施設・設備整備のあり方等について、消防庁の動向を踏まえながら、警防防災委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(3) 消防・救助技術の高度化
 NBC災害対策をはじめとする消防・救助技術の高度化について、消防庁の動向を踏まえながら、警防防災委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(4) 原子力災害に係る消防活動の検討
 原子力災害発生時における消防活動のあり方、隊員の安全確保等について、消防庁の動向を踏まえながら、原子力災害対策消防特別委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(5) 火災調査体制の充実・強化
 火災調査体制の充実・強化方策等について、警防防災委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(6) その他
10 救急業務の推進に関すること (1) 救急搬送体制の強化、救急業務高度化への対応及び市民等への応急手当の普及促進(重点)
 救急業務の推進のため、消防庁の動向を踏まえながら、救急委員会を主体として必要に応じて以下のことについて検討し対応する。
ア 救急搬送体制の強化について
 大規模災害時を含めたMC体制の充実・強化、病院前救護における緊急度判定の実用化、感染症患者への対応等
イ 救急業務高度化への対応について
 救急救命士の処置範囲拡大、ICT技術を活用した救急活動への対応等
ウ 応急手当普及促進方策について
(2) 救急隊員等の教育体制の充実強化について
 救急隊員等の教育体制の充実強化について、消防庁の動向を踏まえながら、救急委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(3) 救急車適正利用PRポスターの製作について
 近年の救急出動件数の増加を踏まえ、救急車の適正利用について、全国的な普及・啓発が必要であることから、救急委員会を主体として、ポスターを製作し、全国の消防本部へ頒布する。
(4) その他
11 危険物業務の推進に関すること (1) 危険物施設の事故防止対策の推進(重点)
 危険物施設における事故防止対策を推進するため、危険物事故防止アクションプランの重点項目として掲げている保安教育による人材育成・技術の伝承、リスクに応じた適切な取組、企業全体の安全確保に向けた体制作り、地震・津波対策の推進について、消防庁等の動向を踏まえながら、危険物委員会を主体として必要に応じて検討し対応する。
(2) その他
12 消防職員の研修の実施に関すること (1) 全国消防長会が主催する研修会
ア 消防長研修会
 会員を対象に、消防の当面する諸問題、消防行政の動向等を内容とする研修会を開催する。
イ 総務関係実務研修会
 各消防本部の総務又は経理部門を担当する職員を対象に、職員の勤務制度及び処遇をめぐる諸問題等に関する研修会を開催する。
ウ 消防財政実務研修会
 各消防本部の総務又は経理部門を担当する職員を対象に、消防財政制度に関する研修会を開催する。
(2) 消防関係機関が主催する研修会等
 研修会に関する要望等を取りまとめ、主催する消防関係機関との連絡・調整等を行う。
(3) その他
13 消防職員並びに消防上特に功労のあった者及び協力した者に対する表彰弔慰に関すること (1) 全国消防職員意見発表会
 消防業務に対する提言や取り組むべき課題等について、各支部から選抜された消防職員による意見発表会を開催し、成績が優秀であった消防職員を表彰する。
(2) 会員に対する表彰
 消防上特に功労のあった会員を消防特別功労表彰及び消防行政功労表彰として表彰する。
(3) 会員以外の者に対する表彰
 水火災その他の災害現場において顕著な功労のあった者及び永年にわたり勤務し、功労のあった消防職員を表彰する。
(4) その他
14 行政相談に関すること (1) 各会員から相談のあった消防行政を取り巻く訴訟事件、法的処理についての事例照会等について、顧問弁護士による対応等を行い、会員の利便性を図る。
(2) その他
15 国際消防機関との連携強化に関すること (1) アジア消防長協会(イフカ)との連絡・協調
 イフカが行う各種事業の円滑な事務運営並びに事業推進に係る支援を行い、相互の発展に努める。
(2) 第29回イフカ総会に係る事務推進
 平成28年に大阪市で開催される第29回イフカ総会に係る各種業務の推進に協力する。
(3) その他
16 行政支援に関すること (1) 一般財団法人全国消防協会が行う、消防実務講習会の開催、消防機器の改良及び開発並びに消防に関する論文の募集、全国消防救助技術大会等の実施、「春・秋の火災予防運動週間」における防火ポスターの企画、機関誌「ほのお」の編さん等を支援する。
(2) 一般財団法人全国消防協会設立50周年を記念して実施される記念事業等を支援する。
(3) その他

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