全国消防長会の平成23年度事業計画をお知らせします
去る3月11日に発生した東日本大震災では、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の巨大地震に加え、広範囲にわたる大津波、原子力発電所における事故、石油コンビナート火災等により、かつてない被害が発生した。
また、昨年度は、7月の中国・九州地方を中心とした豪雨災害、10月の鹿児島県奄美大島の豪雨災害、1月の霧島山(新燃岳)の火山活動の発生等により、甚大な被害が発生している。
さらに、夏期(7月~9月)の記録的な猛暑により、熱中症における救急搬送人員が例年と比較して大幅に増加し、多数の死者も発生している状況である。
わが国の自治体消防は、地域に密着した防災機関として、迅速かつ的確な消防行政の推進に努め、社会情勢に応じた消防防災体制の充実・強化を図り、地域住民の安心・安全の確保に大きな役割を果たすとともに、国際貢献にも重要な役割を果たすことで、信頼と期待に応えながら発展を遂げてきた。
しかしながら、消防を取り巻く情勢は、社会経済や国際情勢、さらには自然環境の変化などにより、災害態様の複雑・多様化、大規模化、住民ニーズの変化、また、近年、全国各地で発生している台風や集中豪雨などの自然災害や、今後、発生が危惧されている東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震などの大規模地震、NBCテロ災害など、あらゆる事態に対する備えが不可欠となっている。
このような状況の下、今回の大震災による経験と教訓を踏まえた震災等大規模災害対策の推進に加え、大規模災害発生の際に被害を最小限にとどめるため、消防機関による防災力だけではなく、地域に存在する総合的な防災力の充実が必要不可欠である。
また、地域を超えて的確かつ迅速に住民の安全確保や応急対策を行うため、国においては、緊急消防援助隊の登録目標を4,500隊としているところであるが、より実効性のある制度とするための検討を早急に実施し、更なる広域消防応援体制の充実・強化を図る必要がある。
消防の広域化は、各都道府県が策定した消防広域化推進計画に基づき、広域化対象市町村が広域消防運営計画を作成し、その実現に向けた具体的な取り組みを行う期限が迫ってきている。また、消防救急無線のデジタル化及び広域化・共同化並びに消防指令業務の共同運用についても、基本的な考え方を決定する時期にきている。
救急需要が増大する中、医療機関との連携及び救急業務の高度化は喫緊の課題であり、救急搬送時の医療機関への受入体制の確保、救急要請時におけるトリアージの実施など、限られた行政資源をこれまで以上に効率的に運用することが必要である。
住宅火災の死者は依然65歳以上の高齢者が占める割合は高く、住宅火災の死者数低減のための既存住宅への住宅用火災警報器の設置が、平成23年6月に全国的に義務化を迎えるにあたり、特に災害時要援護者世帯に対する設置促進等、関係機関と連携した住宅防火対策の普及・啓発活動が必要である。また、近年、雑居ビルや小規模社会福祉施設などの火災により多数の死傷者を出す憂慮すべき事案が発生していることから、防火対象物等の防火・防災安全対策の推進が強く求められており、国において、火災予防行政のあり方に関する総合的な検討も行われている。
一方、危険物施設においても依然、事故の増加に歯止めがかからない状況が続いており、業種を超えた事故の情報の共有化を図り、事故防止対策を講じる必要がある。
国民の安心・安全の確保を担う消防職員の勤務条件を更に改善し、消防職員にふさわしい勤務環境を保持するためには、引き続き消防職員委員会制度の充実に努めていく必要がある。
さらに、消防活動中の消防職員の殉職事故、負傷事故が引き続き発生しており、特に昨年は、消防防災ヘリコプターの墜落事故による殉職事故が発生するなど、組織を挙げての安全管理対策の更なる推進が急務である。
全国消防長会は、消防防災行政が直面する諸課題に対し、地域住民が安心して暮らせる災害に強い安全なまちづくりの実現に向け、組織を挙げて次に掲げる各事業を推進する。
一、震災等大規模災害対策の推進
一、広域消防応援体制の充実・強化
一、消防の広域化への対応
一、消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用への対応
一、救急搬送受入体制の確保及び救急業務高度化への対応
一、防火対象物等の防火・防災安全対策の推進
一、危険物施設の事故防止対策の推進
一、消防職員の処遇改善と安全管理対策の更なる推進
| 項目 | 取り組み内容 |
|---|---|
| 1 総会等会議の運営等に関すること |
(1) 総会等の運営 各事業推進委員会等における検討結果を踏まえ、全国消防長会の意思、方針を決定するため、以下の会議を開催する。 ・総会(6月8日) ・役員会(10月26日) ・常任理事会(総会時、役員会時、2月初旬) なお、緊急事案等が生じた場合は、必要に応じ臨時に開催する。 (2) 総会決議に基づく要望 消防防災体制の一層の充実強化を図り、消防を取り巻く諸情勢に即応した消防行政を積極的に推進するため、強力に推進すべき施策について総会時に決議し、総務大臣等に対して全国消防長の総意を以って要望する。 (3) その他総会等会議の運営等に関すること |
| 2 東日本大震災に伴う全国消防長会の取り組みに関すること |
(1) 震災等大規模災害対策の推進(重点項目) ア 東日本大震災に関する緊急要望 各事業推進委員会を主体として、東日本大震災に係る総務省等関係機関に対する要望事項を総会時に提案・決議し、関係機関に対して全国消防長の総意を以って要望する。 イ 要望事項の措置推進 事業推進委員会において審議した要望事項について、事業推進委員会を主体として検討し、必要な措置を講ずる。 (2) 消防車両等の無償譲渡 地震、津波等により多数の消防車両等が損壊し、被災地の消防力維持が困難な状況にあることから、被災地消防本部への消防車両等の譲渡に向けた事務を実施する。 (3) 活動記録誌の編集 東日本大震災における経験や教訓等を今後の消防行政に反映させることを目的として、被害状況や消防職員の活動状況等について記録誌を編集する。 (4) その他東日本大震災に伴う全国消防長会の取り組みに関すること |
| 3 消防情報の交換に関すること |
(1) 情報管理システム等を活用した情報交換 情報管理システムを活用し、各種情報をデータベースに蓄積するとともに情報の共有化を推進する。引き続きシステムの安全性及び利便性の向上を図るためシステムを整備する。 (2) 会報等の発行 全国消防長会の事業推進及び措置対応を中心に、国の動向、各会員情報、総務省消防庁等からの通知、資料等を「週間情報」「会報」に掲載・発行し、会員、関係機関等に配布する。 (3) その他消防情報の交換に関すること |
| 4 消防制度の改善に関すること |
(1) 消防の広域化への対応(重点項目) 消防の広域化に関する各都道府県の消防広域化推進計画に基づく、広域化対象市町村による広域消防運営計画作成及びその実現にあたり、各消防本部における問題点の把握を行い、必要な情報を適時・適切に提供するとともに、必要に応じて総務省消防庁等、関係機関へ要望する。 (2) その他消防制度の改善に関すること |
| 5 消防財政の確立に関すること |
(1) 国の予算概算要求及び消防財源の確保に係る要望 平成24年度国の予算概算要求に係る要望(6月下旬)及び消防財源の確保に係る要望(11月中旬)を、全国市長会、全国町村会等と連携を図り、総務大臣等に対して全国消防長の総意を以って要望する。 (2) 消防防災施設の整備及び緊急消防援助隊の充実・強化に係る消防財源の確保 財政委員会を主体として、消防防災施設の整備及び緊急消防援助隊の充実・強化を図るため、消防補助負担金の確保、地方債制度、地方交付税の充実等、消防財源確保について検討し、必要な措置を講ずる。 (3) その他消防財政の確立に関すること |
| 6 消防職員の教養及び処遇に関すること |
(1) 消防職員の処遇改善(重点項目) 総務委員会を主体として、消防組織制度及び消防職員の人事、服制等に関する諸課題について検討し、必要な措置を講ずる。 (2) その他消防職員の教養及び処遇に関すること |
| 7 消防機械及び技術の総合的研究に関すること |
(1) 消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用への対応(重点項目) 技術委員会を主体として、総務省消防庁の動向を踏まえながら、消防救急無線のデジタル化及び広域化・共同化並びに消防指令業務の共同運用に伴う諸課題について検討し、必要な措置を講ずる。 (2) 位置情報通知システム(統合型)の導入 技術委員会を主体として、総務省消防庁の動向を踏まえながら、位置情報通知システム(統合型)の導入に伴う諸課題について検討し、必要な措置を講ずる。 (3) その他消防機械及び技術の総合的研究に関すること |
| 8 予防業務の推進に関すること |
(1) 防火対象物等の防火・防災安全対策の推進(重点項目) 予防委員会を主体として、住宅防火安全対策及び防火対象物等における防火・防災安全対策について、総務省消防庁の動向を踏まえながら検討する。 ア 住宅防火安全対策の検討 住宅火災による被害の低減について、効果的な注意喚起広報のあり方等、住宅防火対策について検討するとともに、引き続き住宅用火災警報器の普及を促進する。 イ 防火対象物の防火安全対策の検討及び防災管理能力の向上 雑居ビル、小規模社会福祉施設等の小規模事業所等及び大規模・高層建築物等における防火・防災安全対策について検討する。 (2) その他予防業務の推進に関すること |
| 9 警防・救助技術の充実に関すること |
(1) 安全管理対策の更なる推進(重点項目) 安全管理に対する取組みは、事業推進委員会及び各消防本部において推進されてきた。しかしながら、災害現場や訓練時等での殉職事故、負傷事故が後を絶たない状況から、更なる安全管理対策を推進する。 (2) 広域消防応援体制の充実・強化(重点項目) 警防防災委員会を主体として、緊急消防援助隊の活動体制の充実・強化及び連携活動能力の向上を図る。 (3) 火災調査体制の充実・強化 警防防災委員会を主体として、火災調査体制の充実・強化に関する諸問題について検討し、必要な措置を講ずる。 (4) その他警防・救助技術の充実に関すること |
| 10 救急業務の推進に関すること |
(1) 救急搬送受入体制の確保及び救急業務高度化への対応(重点項目) 救急委員会を主体として、総務省消防庁の動向を踏まえながら、MC体制の充実・強化、病院前救護における緊急度判定の実用化、法改正に伴う救急搬送受入体制の確保、新型インフルエンザ対策等について、必要に応じて検討し、措置を講ずる。 (2) 救急車適正利用PRポスターの製作 救急委員会を主体として、救急車の適正利用について、全国的な普及・啓発が必要であることから、引き続き普及・啓発ポスターを製作し、各消防本部へ頒布する。 (3) その他救急業務の推進に関すること |
| 11 危険物業務の推進に関すること |
(1) 危険物施設の事故防止対策の推進(重点項目) 危険物委員会を主体として、危険物施設における事故防止対策を推進するため、総務省消防庁等の動向を踏まえながら、危険物事故防止アクションプランの重点項目として掲げている、地震対策の推進、日常点検の推進、保安教育の充実、経年劣化による流出事故防止対策の推進等について、必要、有効な措置を講ずる。 (2) 地下貯蔵タンクの流出事故防止対策の推進 内面ライニング又は電気防食等による流出事故防止措置が必要な腐食のおそれが(特に)高い地下貯蔵タンクについて、経過措置期限内に対象地下貯蔵タンクの全てが対策工事を完了するよう、総務省消防庁及び各消防本部等と情報交換を行いながら、早期の改修計画の作成及び改修措置の指導等を推進し、必要な措置を講ずる。 (3) その他危険物業務の推進に関すること |
| 12 消防職員の研修の実施に関すること |
(1) 全国消防長会が主催する研修会 ア 消防長研修会 会員を対象に、消防の当面する諸問題及び消防行政を内容とする研修会を開催する。 イ 総務関係実務研修会 各消防本部の総務又は経理部門を担当する課長又は係長等を対象に、職員の勤務制度及び処遇をめぐる諸問題に関する研修会を開催する。 ウ 消防財政実務研修会 各消防本部の総務又は経理部門を担当する課長又は係長等を対象に、消防財政制度に関する研修会を開催する。 (2) 消防関係機関が主催する研修会等 研修会に関する要望等の取りまとめ、主催する消防関係機関との連絡・調整等を行う。 (3) その他消防職員の研修の実施に関すること |
| 13 消防職員並びに消防上特に功労のあった者及び協力した者に対する表彰弔慰に関すること |
(1) 全国消防職員意見発表 各支部から選抜された職員が、業務に対する提言や取り組むべき課題等について自由に発表し、消防業務の諸問題に関する一層の知識の研鑽と意識の高揚を図ることを目的として開催する。 (2) 消防上特に功労のあった者等に対する表彰 全国消防長会規約に基づき、以下の者を表彰する。 ア 消防特別功労表彰及び消防行政功労表彰として消防上特に功労のあった者 イ 水火災その他の災害現場において顕著な功労のあった者 ウ 消防職員として引続き満20年以上勤務し功労のあった者 エ その他消防上特に功労のあった者 (3) その他消防職員並びに消防上特に功労のあった者及び協力した者に対する表彰弔慰に関すること |
| 14 行政相談に関すること |
(1) 各会員からの消防行政を取り巻く法的処理についての訴訟事件、事例照会等について、顧問弁護士による対応等により会員の利便性を図る。 (2) その他行政相談に関すること |
| 15 国際消防機関との連携強化に関すること |
(1) アジア消防長協会事業 アジア消防長協会(イフカ)との連絡・協調を図り、イフカが行う各種事業に係わる円滑な事務運営並びに事業推進を支援し、相互の発展に努める。 (2) その他国際消防機関との連携強化に関すること |
| 16 行政支援に関すること |
(1) (財)全国消防協会が行う、消防実務講習会の開催、消防機器の改良・開発及び消防に関する論文の募集、「春・秋の火災予防運動週間」における防火ポスターの紹介等を支援する。 (2) その他行政支援に関すること |
トップページ>今年度の事業計画