全国消防長会

平成30年 年頭の辞

  全国消防長会
  会 長  村上 研一

 平成30年の輝かしい新春を迎え、会員の皆様をはじめ、全国の消防関係者の皆様に謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 皆様には、平素より消防行政の円滑な推進に格別のご支援とご協力を賜り、厚く御礼を申し上げます。
 市町村消防の原則に基づく自治体消防制度が、昭和23年の消防組織法施行により確立し、今年で70周年を迎えます。消防機関は、地域社会とともに着実に発展を遂げ、地域住民の安全・安心の確保に大きな役割を果たしてまいりました。その間の幾多の先人と関係各位のご尽力に、改めて感謝を申し上げます。
 昨年の国内の災害状況を顧みますと、鎮火まで長時間を要した2月の埼玉県三芳町での物流倉庫火災、緊急消防援助隊が出動した「平成29年7月九州北部豪雨」、7月から10月に相次いで日本列島に上陸した台風、12月に埼玉県さいたま市で発生した特殊浴場の火災などにより、多くの尊い人命や貴重な財産が失われました。
 また、国外に目を向けると、世界各地でテロ災害が頻発したほか、全国から17名の国際消防救助隊員が派遣された9月のメキシコ合衆国での大規模地震、多数の死傷者が発生した12月の韓国のスポーツ施設火災など、安全を脅かす災害は後を絶ちませんでした。
 ラグビーワールドカップ2019や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会等の国際的な大規模行事の開催を控え、テロ等による災害の発生が懸念されるなか、消防機関に寄せられる期待は、ますます大きなものとなっております。
 全国消防長会では、こうした状況のなか、第69回総会で決議した9項目にわたる諸施策を中心とした業務を推進しているところであります。年頭にあたり、その取組みの一端について申し述べたいと思います。
 はじめに、「震災等大規模災害対策の推進」についてです。
 首都直下地震、南海トラフ地震等の発生が危惧されているところですが、政府の地震調査委員会は、昨年12月に千島海溝沿いで今後マグニチュード8.8以上の地震が起きるおそれがあるとする新たな評価を公表しました。
 本会では、過去の震災等の経験と教訓を踏まえ、消防団、自主防災組織等の関係機関と連携しながら大規模地震発生時に迅速かつ的確な対応が図れるよう、地域の総合的な防災力を強化し、消防防災体制の一層の充実を図るため、ソフト・ハード両面において積極的な取組みを進めるとともに、そのための財政支援等について各種要望を国等に行っております。
 次に、「消防広域応援体制の充実・強化」についてです。
 消防庁では、大規模・特殊災害等に備え、緊急消防援助隊の更なる充実・強化を図るため、登録部隊数を平成30年度末には6,000隊とする目標を掲げており、平成29年4月1日時点において、全732消防本部のうち727消防本部が部隊登録し、前年から357隊増えて5,658隊となっております。
 本会では、緊急消防援助隊のブロック訓練を通じて各消防本部の連携強化を図るとともに、その活動体制の強化に必要な財政支援について、国に対し要望を続けてまいります。
 また、ラグビーワールドカップ2019や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会といった国際的な大規模行事においては、消防の警戒活動について広域的な応援体制を確保していく必要があり、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会等特別委員会を中心として、消防庁等の関係機関と連携しながら積極的に対応してまいります。
 3つ目は、「消防の広域化への対応」についてです。
 消防を取り巻く環境の変化に的確に対応するため、消防庁が地域の実情を考慮して、集中的に重点地域の支援を行っており、平成29年度からは、消防事務の一部を、その性質に応じて柔軟に連携・協力することが推進されています。
 本会では、平成30年4月を推進期限とされている消防の広域化とその財政措置の期限を延長することを国に要望しており、引き続き広域化が一層推進されるよう積極的に取り組んでまいります。
 4つ目は、「消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用への対応」についてです。
 消防救急無線のデジタル化に伴う新たな運用面に係る諸課題への対応を行っていくとともに、広域化・共同化や消防指令業務の共同運用を図ることも、消防業務の効率的な運用に大きく資するものであります。
 本会では、引き続き必要な財政支援について要望するとともに、消防防災分野におけるICT(情報通信技術)等の利活用の推進についても、消防庁等の動向を踏まえながら必要な検討を進めてまいります。
 5つ目は、「救急搬送体制の強化、救急業務高度化への対応及び市民等への応急手当の普及促進」についてです。
 近年、救急需要が高まっているなか、依然として救急搬送における受入れ医療機関の選定が困難な事案が発生しています。傷病者の救命率向上のためには、医療機関との一層の連携による救急搬送体制の強化、ICTを活用した救急業務の高度化、市民等への応急手当の普及促進など、救急業務の更なる充実を推進する必要があります。
 本会では、大規模災害時を含めたメディカルコントロール体制の充実・強化、転院搬送における救急車の適正利用、救急安心センター事業(#7119)の普及促進など、万全な救急搬送体制の構築を図ってまいります。
 6つ目は、「防火対象物等の防火・防災安全対策の推進」についてです。
 全国の住宅用火災警報器の設置率は平成29年6月1日現在で81.7%(総務省消防庁調べ)と着実に向上しているものの、住宅火災による死者のうち65歳以上の高齢者の占める割合は約7割と依然として高い状況にあります。今後、一層の高齢化の進展に伴い、住宅火災による死者数の更なる増加が懸念されています。
 本会では、住宅火災による被害低減のため、住宅用火災警報器の設置率向上に加えて維持管理対策、たばこ火災防止キャンペーンの実施、防炎品の普及促進など、総合的な住宅防火対策を推進してまいります。
 また、簡易宿泊所・飲食店等の消防法令違反是正の徹底、民泊サービスなどの新たな法整備についての対応等、ソフト・ハード両面に渡る防火・防災安全対策も進めてまいります。
 7つ目は、「危険物施設の事故防止対策の推進」についてです。
 危険物を取り扱う施設は減少傾向にある一方で、火災や漏洩事故は依然として高い水準で発生している状況にあります。危険物施設で災害が発生した場合には、人命や財産などに甚大な被害を及ぼす恐れがあり、社会への影響も非常に大きいことから、関係事業所等においても様々な安全対策が講じられているところです。
 本会では、消防機関、危険物に係る業界団体等が参画する危険物等事故防止対策情報連絡会において策定された「平成29年度危険物等事故防止対策実施要領」に基づき、保安教育の充実による人材育成・技術の伝承、リスクに対する適時・適切な取組、企業全体の安全確保に向けた体制作り、地震・津波対策等各種事故防止対策を積極的に進めてまいります。
 8つ目は、「消防・救急需要に的確に対応した消防職員の確保及び消防装備等の充実」についてです。
 本会では、将来的な人口減少や高齢化の進展等社会の諸情勢を捉えながら、消防・救急需要に的確に対応するため、あらゆる消防力の基礎となる消防職員の確保や消防装備の充実、消防庁舎等の整備に適切かつ積極的に取り組んできたところであります。
 今後も引き続き、消防力の整備指針に示す消防人員や、緊急消防援助隊の運用に必要な消防人員の確保など関係団体への働きかけをしてまいります。
 最後は、「消防職員の処遇改善と安全管理対策の更なる推進及び女性の活躍推進」についてです。
 住民の安全・安心の確保を担う消防職員の処遇については、勤務条件の更なる改善や、消防職員に相応しい勤務環境を保持していかなければなりません。そのためにも、本会では引き続き消防職員委員会制度を効果的に活用することにより推進してまいります。
 また、昨年も災害現場や訓練時における殉職や受傷事故が発生し、絶えることがありません。本会では、安全管理教育、安全管理マニュアルの徹底に組織を挙げて取り組むほか、事故情報の共有化等を通じて、更なる安全管理対策を講じてまいります。
 さらに、女性消防吏員の更なる活躍に向けた取組みを強化していく必要があることから、本会として女性消防吏員の増加及び職域拡大、勤務条件の改善、施設の整備などソフト・ハード両面から支援する方策について検討してまいります。
 以上、全国消防長会の取組みの一端について申し述べてまいりました。消防行政を取り巻く環境が厳しさを増すなか、我々全国の消防長は、より一層結束して取り組み、関係機関との更なる連携のもと、消防防災体制の充実・強化、消防活動能力の向上など直面する諸課題に全力を挙げて取り組んでまいります。
 本年3月には、東京都の国技館において「自治体消防制度70周年記念式典」が開催されます。また、5月には同じく東京都の東京ビッグサイトにおいて、本会総会とアジア消防長協会の総会に併せて「東京国際消防防災展2018」も開催される予定です。全国の消防長及びアジア各国の消防長とも融和協調を図り、技術交流・情報交換等を促進し、更に消防を発展させてまいります。
 全国の消防関係者の皆様におかれましても、地域住民がより安全で安心して暮らせる社会の実現のため、引き続きご尽力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
 結びに、皆様のますますのご健勝とご多幸、そして何より、本年が災害のない平穏な一年でありますことを心からご祈念申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。

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