全国消防長会

平成29年 年頭の辞

 平成29年の輝かしい新春を迎え、会員の皆様をはじめ、全国の消防関係者の皆様に謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 皆様には、平素から消防行政の円滑な推進に格別のご支援とご協力を賜り、厚く御礼を申し上げます。
 さて、我が国の消防は、幾多の先人と関係各位のご尽力により、地域住民の理解と協力を得ながら着実に発展を遂げ、今日に至っておりますが、住民生活の安全を脅かす災害は後を絶ちません。
 昨年の国内における災害状況を顧みますと、4月に発生した「平成28年熊本地震」、8月以降に相次いで上陸した台風、10月に発生した鳥取県中部の地震など、日本各地において自然災害が猛威をふるい、広範囲にわたり甚大な被害がもたらされ、多くの尊い人命と貴重な財産が失われました。
 熊本県の阿蘇山では36年ぶりの爆発的噴火が発生し、噴火警戒レベルが3に引き上げられるなど火山の噴火等に対する警戒活動も引き続き行われております。さらには、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生も依然として危惧されているところであります。
 また、12月末には、新潟県糸魚川市で140棟以上が焼損する大規模な市街地火災が発生しました。
 国外では様々な国でテロ等による災害が発生しており、我が国においてもラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピック等の国際的な大規模行事の開催を控え、国内におけるテロ等による災害の発生が懸念されるなか、国民からは消防の的確な対応力の強化が強く求められています。
 全国消防長会といたしましては、こうした状況下において住民の負託に応えられるよう、第68回総会で決議した諸施策を中心とした業務を推進しているところでありますが、年頭にあたり、その取り組みの一端について申し述べたいと思います。
 はじめに、「震災等大規模災害対策の推進」についてです。
 昨年4月に発生した「平成28年熊本地震」では、被災地消防本部が初動対応の要として全力を尽くすとともに、緊急消防援助隊約1,400隊5,000名が迅速出動し、多数の住民を救出するなど大きな成果を挙げたところです。しかしながら、その後も強い揺れを伴う地震が各地で断続的に発生しており、大地震やそれに伴う津波に対する住民の不安は消えることはありません。
 本会といたしましては、過去の震災等の経験と教訓を踏まえ、消防団、自主防災組織等の関係機関・団体と連携しながら大規模地震発生時には迅速かつ的確な対応が図られるよう、地域の総合的な防災力を強化し、消防防災体制の一層の充実を図るため、ソフト・ハード両面において積極的な取り組みを進めており、また、国に対して強く要望活動を行っております。
 次に、「消防広域応援体制の充実・強化」についてです。
 消防庁では、大規模・特殊災害等に備え、緊急消防援助隊の更なる充実・強化を図るため、登録部隊数を平成30年度末には6,000隊とする目標を掲げており、平成28年4月1日時点において、5,301隊まで増隊しております。
 本会といたしましては、緊急消防援助隊のブロック訓練の継続実施を通じて各消防本部の連携強化を図るとともに、その活動体制の強化に必要な財政支援について、国に対し要望を続けてまいります。
 また、今後開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピックといった国家的行事においては、全国的な消防の広域応援消防特別警戒態勢を確保していく必要があり、関係機関と連携しながら積極的に取り組んでまいります。
  三つ目は、「消防の広域化への対応」についてです。
  消防の広域化については、平成30年4月の推進期限に向け、規模目標のみにとらわれず地域の事情を十分考慮できるよう、消防広域化重点地域の枠組みを設け、国や都道府県が集中的に支援を行っているところであります。
 本会におきましても、各消防本部の実情を把握するとともに適時・適切な情報提供を行うなど、連携を緊密にしながら消防の広域化が一層推進されるよう積極的に取り組んでまいります。
 また、消防本部間での消防指令業務など業務分野ごとの柔軟な連携協力を推進するとともに、小規模消防本部が抱える課題解決のため必要な支援を引き続き行ってまいります。
 四つ目は、「消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用への対応」についてです。
 消防救急無線については、デジタル化に伴う新たな運用面に係る諸課題への対応を行っていくとともに、広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用、更には消防防災分野におけるICT(情報通信技術)とG空間情報(地理空間情報)の利活用の推進について、消防庁等の動向を踏まえながら必要な検討を進めてまいります。
 五つ目は、「救急搬送体制の強化、救急業務高度化への対応及び市民等への応急手当の普及促進」についてです。
 近年、高齢化の進展等に伴い救急需要が高まっているなか、依然として救急搬送における受入れ医療機関の選定が困難な事案が発生し、結果として救急隊の到着時間及び病院収容までの時間が延伸している現状にあります。傷病者の救命率向上のため消防と医療機関の一層の連携による救急搬送体制の強化、ICT技術を活用した救急業務の高度化への対応、市民等への応急手当の普及促進など、救急業務の更なる充実を推進する必要があります。
 各都道府県では、地域の実情に応じた傷病者の搬送及び受入れに関する実施基準を策定し対応しているところですが、本会といたしましても、大規模災害時を含めたメディカルコントロール体制の充実・強化、病院前救護における緊急度判定の実用化、感染症患者への対応の充実、転院搬送における救急車の適正利用、救急安心センター事業(#7119)の普及促進など、万全な救急搬送及び受入れ体制の構築を図ってまいります。
 六つ目は、「防火対象物等の防火・防災安全対策の推進」についてです。
 住宅火災については、全国の住宅用火災警報器の設置率は81.2%(平成28年6月1日現在(総務省消防庁調べ))と着実に進んできているものの、65歳以上の高齢者が火災による死者に占める割合は、依然として高い状況にあります。今後、一層の高齢化の進展に伴い、住宅火災による死者数の更なる増加が懸念されることから、住宅用火災警報器設置率の向上と併せて、新築住宅に住宅用火災警報器の設置が義務付けられてから10年を迎えたことを踏まえ、住宅用火災警報器の維持管理等を含めた総合的な住宅防火対策の推進が必要となっています。また、簡易宿泊所・飲食店などにおける消防法令違反等の是正の徹底、さらに国が進める「民泊サービス」等の新たな法整備についての対応等、ソフト・ハード両面に渡る防火・防災安全対策の推進が求められています。
 本会といたしましては、住宅火災による被害低減のため、住宅用火災警報器の設置率向上のための施策やたばこ火災防止キャンペーンの実施、防炎品の普及促進など、広報に重点を置いた総合的な住宅防火安全対策を推進してまいります。
 また、消防法令が改正されたことに伴い消防用設備等が新たに設置義務となる施設や大規模・高層建築物等の防火対象物について、過去の火災等の教訓を踏まえ、人命危険を考慮した立入検査や消防法令違反等の是正に積極的に取り組んでまいります。
 七つ目は、「危険物施設の事故防止対策の推進」についてです。
  危険物を取り扱う施設は減少傾向にある一方で、火災や漏洩事故は依然として発生している状況にあり、その件数については平成6年以降増加の傾向にあります。危険物施設で災害が発生した場合には、人命や財産などに甚大な被害を及ぼす恐れがあり、社会への影響も非常に大きいことから、危険物災害に対する住民の関心は高く、関係事業所等においても様々な安全対策が講じられているところです。
 本会といたしましても、関係団体等と安全対策や事故情報の共有化を図りながら、危険物等事故防止対策情報連絡会で示された実施要領に基づき、保安教育による人材育成・技術の伝承、リスクに応じた適切な取り組み、企業全体の安全確保に向けた体制作り、また地震・津波対策の推進について、消防庁等の動向を注視しながら継続的に推進してまいります。
 最後になりますが、「消防職員の処遇改善と安全管理対策の更なる推進及び女性の活躍推進」についてであります。
 住民の安全・安心の確保を担う消防職員の処遇については、勤務条件の改善や勤務環境の更なる向上等を図ることが不可欠であり、引き続き消防職員委員会制度の効果的な活用を通じ推進していく必要があります。
 また、安全管理に対する取り組みについては、災害現場や訓練時等における事故が依然として絶えないことから、安全管理教育、安全管理マニュアルの徹底に組織を挙げて取り組むほか、事故情報の共有化や事故防止の効果が期待される装備の改善など、更なる安全対策を講じてまいります。
 さらに、地域住民のニーズの多様化に対応し、更なる消防サービスの向上、消防組織の活性化を図るため、消防の分野においても女性消防吏員の増加と活躍を推進していく必要があります。
 以上、年頭にあたり全国消防長会の取り組みの一端について申し述べましたが、消防行政を取り巻く環境が厳しさを増すなか、我々全国の消防長は、直面する諸課題に対してより一層結束して取り組み、関係機関との更なる連携のもと、消防防災体制の充実・強化、消防活動能力の向上に全力を挙げて取り組んでまいります。
  全国の消防関係者の皆様におかれましても、地域住民がより安全で安心して暮らせる社会の実現のため、引き続きご尽力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
 結びに、皆様のますますのご健勝とご多幸、そして何より、本年が災害のない平穏な一年でありますことを心からご祈念申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。

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